ペルソナ3ポータブル

 数年前にvitaで持っていたんだけど、容量不足とか充電ケーブルの不具合とかでvita自体起動するのが億劫になってほとんどやっていなかった。念願のマルチプラットフォームリマスターが来たのでプレイ。
 男主人公で始めるか女主人公で始めるかだいぶ悩んだ。本編ほぼ未プレイならオリジナルの男主人公で始めるべきなんだろうが、女主人公のデザインが結構好きなのと、メインビジュアルである「満月」に女性性を見出してしまって、勝手に似つかわしいかなとか考えてた。あとちょうど発売日に己の身にも月がやってきたので、そういう偶然にも後押しされて一週目から女性主人公でプレイ。原理主義者からすれば邪道だろうな。でもこれはわたしのゲーム体験なので……。
 エンディング、もとい、最終三日間がこのゲームの真髄だと思う。歴代随一のアウトロと言ってもいい。クリアしてから二日くらい経つけどまだあわい余韻の中にいる。

 ゲームが据えたテーマ(死 あるいはメメントモリ)と、プレイヤーに与えるインパクトが、凄まじい説得力を以て噛み合っている。
 キャラクターを殺すのは簡単だ。それだけで悲劇を作れるし、悲劇は消費され易い。
 主人公が死ぬコンテンツ、とりわけRPGに触れるのは初めてではない。副次的なネタバレが出るので具体名は出さないけど、それらも大好きなゲームだ。
 でもペルソナ3が主人公の死によって演出したかったのは、カタルシスでもなく、究極の自己犠牲でもなく、贖罪でもない。誰にでも等しくいつか訪れるそれと向かい合う疑似体験を与えること。
 エンディングには少なからず驚いたけど、でも、直截的な表現はないのに、「目を閉じますか?」というダイアログだけで死の訪れを確信してしまうくらい、種は巻かれていた。本来はラストバトルの1月31日に死んでいたっておかしくなかった。世界を守る代償としては、不謹慎だけど安すぎるくらいだ。
 卒業式で再会するための延命。運命がそうさせたのか、主人公が懸命に生き延びたのかは分からないけれど。
 寮に帰ったときの無音、主人公がやんわりと訴える身体の不調。タルタロスを攻略したわけでもないのに、全身を包んでいる疲労と眠気。
 そして3/5の朝。ここの情報の出し方が、すごくにくい……。主人公は多くを語らないけど、アイギスの言葉から主人公が卒業式に行かずに自室にいることが分かる。もう起き上がるのもきつかったのかな。アイギスに支えられながら屋上へ上がったのかもしれない。
 そうして春先のやわらかな陽射しと、優しく、けれどどこか泣きそうなアイギスの言葉に包まれながら、階段を駆け上る仲間たちの歓声を聴きながら、主人公は眠りの中に落ちていく…………。
 もう……こんなのは……「理想の死」なんだよね。残される人たちのことを思えば悲劇的なのだけど、主人公にとっては、不可避の結末を回避して、愛する世界と仲間たちを守って、仲間たちは約束を思い出してくれて――誇張じゃなく、人生でいちばん幸せだったであろう瞬間に眠るような死を迎えたわけだから。羨望しちゃうくらい理想的な死。だから、少なからず衝撃的な展開だけど、いわゆる「鬱ゲー」みたいな印象は受けないし、どうしてこんなことするの?みたいな悲嘆もない。ひたすらにうつくしい。「勝ち逃げ」だな、と思った。
 3/5を迎えるまでの3日間、何度かプレイし直したんだけど、コミュニティを築いた仲間と未来の話をするたびに呻き声が出る。みんな主人公との未来が当たり前に続くものと思っている。約束を守るとは名言しない選択肢があるのは、誠実さの一端なのかなあ。
 男主人公でクリアしたら追記する。個人的すぎる所感だけどコロマルの掘り下げが欲しかったです。